経営企画に未経験で転職できるか（転職成功に必要なスキルや経験）　

「経営企画」という職種に興味はあるけれど、実態がよくわからない。未経験から挑戦しても本当に通用するのだろうか――。そんな不安を抱えながらも、「将来は経営に近い立場で働きたい」「数字や戦略に強くなりたい」と考えている20〜30代の方にとって、経営企画は魅力的な選択肢のひとつです。

ただし、経営企画は会社によって役割がまったく異なり、いわゆる“戦略を描くだけ”のポジションではありません。予算管理や経営会議の運営、事業部との調整業務まで幅広い業務に対応するため、即戦力が求められるケースも多く、「未経験歓迎」と明記された求人はそれほど多くないのが現実です。

では、未経験からでも経営企画を目指すことは本当に可能なのでしょうか？　本記事では、実際に経営企画にキャリアアップしている人たちの経歴やスキルをもとに、未経験からのリアルな転職ルートや、転職成功のために必要な準備、やりがいと求められる資質までをわかりやすく解説していきます。経営企画というキャリアに一歩踏み出したい方は、ぜひ参考にしてみてください。

経営企画とは？｜会社によって役割が違うポジション

経営企画という職種は、企業によってその役割や業務範囲が大きく異なります。ある企業では経営戦略の立案がメイン業務であり、別の企業では事業部門の中期計画支援や、予算の策定・進捗管理が中心となる場合もあります。つまり「経営企画＝戦略を考える仕事」と一括りにはできないのが実情です。

たとえばスタートアップや中堅企業では、経営陣の右腕として新規事業の検討から採用戦略、IR資料作成まで幅広く関与することもあります。一方で大企業の経営企画では、グループ全体の経営方針を立てるような高度な業務に加え、各事業部から集まる予算・実績データの分析や、経営会議の運営といったコーポレート寄りの仕事が中心になる傾向があります。

このように業務の幅は広いですが、共通して言えるのは「経営層に近い立場で会社の方向性を支える仕事」であること。経営陣の意思決定を支援する役割を担うため、全社視点と論理的思考力、そして実行力が求められます。仕事内容の違いを知ることで、自分の志向や強みに合った経営企画のキャリアを描きやすくなります。

経営企画に転職するには未経験でも可能？｜リアルな転職ルート

経営企画は人気の高い職種ですが、完全な未経験での転職はやや難易度が高いのが現実です。というのも、経営判断の基礎となる情報を分析し、戦略立案や全社調整に関わるため、一定のビジネス経験や論理的思考力、数字に強いスキルが求められるからです。

ただし、間接部門や事業部門などで何らかの専門性を持っていれば、未経験からでも経営企画を目指すことは十分に可能です。たとえば、コンサルタントや経理、FP&A、事業企画、営業企画、法務などからの転職実績が多く、自身の強みや経験をどう経営に活かせるかを語れる人材は歓迎されます。

また、経営企画は“ゼネラリスト”よりも“何かしらの専門性を持った人”がキャリアアップとして就くケースが多いです。そのため、自分の過去の経験を棚卸しして「経営に近いポジションでどう貢献できるか」を明確にすることが、転職成功のカギになります。未経験でも「強みのある分野からのステップアップ」であれば、道は十分に開けています。

どんな人が経営企画にキャリアアップしているのか？｜事業側・コーポレート出身者の強み

経営企画には、他部門で実績を積んだ後にキャリアアップする人が多く見られます。特に、事業部門やコーポレート部門で培った専門性をベースに、経営に近い視点で貢献できる人材が求められています。

たとえば、営業やマーケティング、事業開発などの“事業側”出身者は、顧客や現場の課題に精通しており、現実的かつ実行可能な戦略立案に強みを持ちます。特に、新規事業の企画や中期計画の策定といった業務では、現場を知る視点が大きな武器になります。

一方、経理・財務・法務・人事などの“コーポレート部門”出身者は、数字に基づいた分析力やガバナンス意識を武器に、経営計画や予算管理、内部統制などで力を発揮します。予実管理や会議体運営といった実務においては、こうしたバックオフィスの視点が不可欠です。

経営企画は“ゼネラリスト職”ではなく、“強みを持った専門家が経営に寄与する場”ともいえます。今いる場所で得た経験や視点をどう経営に活かせるか、それを言語化できる人が、経営企画へのキャリアアップを実現しています。

必要なスキル①｜戦略思考と企画力（事業企画・コンサル経験が活かせる）

経営企画の中核となるのが「戦略思考」と「企画力」です。単なるアイデア出しではなく、論理性と実現可能性のバランスを取りながら、経営課題を解決する打ち手を設計・提案する力が求められます。

この点で、事業企画や新規事業開発の経験がある人は、仮説立案・市場分析・競合調査といったスキルをそのまま活かすことができます。また、コンサル出身者も、フレームワークを活用した戦略立案や、経営層への提案経験などが高く評価されやすい傾向にあります。

重要なのは、「戦略を描いて終わり」ではなく、それを現場で実行できる形に落とし込み、関係部署を巻き込んで動かせる力です。説得力ある資料を作り、ロジカルに説明し、社内を動かすコミュニケーション能力も含めて“企画力”とされます。

未経験であっても、これらの要素を一部でも業務で体験している場合は、アピールの余地があります。自分の中にある「構造的に考える力」「課題から打ち手を考える癖」を棚卸ししてみることが、第一歩になります。

必要なスキル②｜会計・予算管理スキル（経理・ファイナンス経験が活きる）

経営企画は「戦略を立てる」だけでなく、「数字に基づく意思決定を支える」役割も担います。そのため、会計やファイナンスの知識、特に予算管理や財務分析のスキルは非常に重宝されます。

実際の業務では、全社や部門の予算を編成したり、実績との差異を分析して改善提案を行ったりといったタスクが頻繁に発生します。その際、PL（損益計算書）やBS（貸借対照表）、CF（キャッシュフロー計算書）を読み解ける力は必須。経理や財務部門での経験がある人は、これらのスキルをそのまま活かせます。

また、経営企画のミッションの一つに「数値に裏付けられた戦略提案」があります。感覚や勘ではなく、定量的な根拠に基づく分析・報告ができる人材は、経営層からも信頼されやすくなります。特に、ExcelやBIツールなどを使ったデータ分析スキルは、実務での即戦力になります。

未経験でも、経理職や財務分析に関わった経験があれば、それは立派なアピールポイントです。数字で経営を支える力は、戦略立案と同等以上に重要な要素として評価されます。

未経験から目指す場合に有利な経歴・資格とは？｜コンサル・会計士・MBAなど

未経験から経営企画を目指すうえで有利とされる経歴には共通点があります。それは「経営と現場の橋渡しができる素地を持っていること」。特に、戦略や数値管理に関わる経験がある職種は、非常に評価されやすい傾向にあります。

たとえば、戦略系や業務系コンサルティングファーム出身者は、経営課題の抽出から施策提案までのプロセスを経験しており、そのまま経営企画の業務にスムーズにフィットします。公認会計士も、財務諸表の読み解きや内部統制に強く、予算管理やM&Aなどの場面で即戦力となります。

さらに、MBA取得者は経営に必要な知識を網羅的に習得しているため、未経験でもロジカルな思考力や全社視点をアピールしやすく、企業からのニーズも高いです。もちろん資格が全てではありませんが、USCPAや中小企業診断士なども「経営に関する基礎知識がある人材」として一定の評価を受けます。

とはいえ、最も大切なのは「自分の経験をどう経営に活かせるか」を言語化する力です。たとえ資格がなくても、実務で得た専門性を経営企画の業務に結びつけて語れるかどうかが、選考を突破するうえでのカギになります。

転職を成功させるためにやるべき準備｜情報収集・志望動機の磨き方

経営企画は企業によって役割や求められるスキルが大きく異なるため、事前の情報収集は非常に重要です。業務内容、組織体制、経営陣の考えなどをリサーチし、自分が活躍できるフィールドかどうかを見極めましょう。求人票だけでなく、IR資料やプレスリリース、社員インタビューなども有益な情報源です。

志望動機の作成においては、「なぜ経営企画に挑戦したいのか」だけでなく、「なぜこの会社の経営企画なのか」を明確にすることがポイントです。経営課題への関心や事業戦略への共感など、自分の想いと会社の方向性を接続できるように意識しましょう。

さらに、自分のこれまでの経験やスキルをどう経営企画の業務に活かせるかを具体的に語れる準備が必要です。たとえば、予実管理の経験があるなら「数値に基づく改善提案ができる」、事業開発の経験があるなら「企画立案から実行までを推進できる」といったように、言語化の精度が成功の分かれ目になります。

「経営企画に興味があります」だけでは他の候補者と差がつきません。企業ごとの特徴を踏まえ、具体的な貢献イメージを描ける人が、未経験でも選考を突破できるのです。

経営企画職の実態とやりがい｜現場で求められることを知る

経営企画というと「戦略を立てる花形ポジション」というイメージを持たれがちですが、実際の現場では地道な作業や社内調整が多く、“縁の下の力持ち”としての働きが求められます。会社の中長期方針や事業戦略を設計するだけでなく、関連部署を巻き込んで実行に落とし込む力が不可欠です。

たとえば、月次の予実分析資料をまとめて経営会議の運営を担ったり、部門ごとのKPI達成状況をヒアリングして次の打ち手を検討したりと、地味ながらも会社全体を動かす“司令塔”のような働き方が日常です。そのため、分析力に加えて高いコミュニケーション力や巻き込み力が求められます。

一方で、経営層と近い距離で仕事ができる点は、大きなやりがいでもあります。自分が分析したデータや提案した施策が、会社の意思決定に反映されたときの達成感は、他の職種ではなかなか味わえません。短期的な結果よりも、長期的な視点で企業成長を支えるポジションだからこそ得られる充実感があります。

華やかさだけでなく、実務としてのリアルを理解しておくことが、経営企画を目指すうえでの大切な心構えになります。やりがいと責任が表裏一体の職種であることを理解したうえで挑戦すれば、長く活躍できるキャリアになるはずです。

まとめ

経営企画は「会社の未来をつくる仕事」として非常にやりがいのあるポジションですが、実態は企業によって大きく異なり、戦略立案から数値管理、社内調整まで幅広いスキルが求められる仕事です。そのため、未経験からの挑戦にはしっかりとした準備と、これまでの経験の棚卸しが欠かせません。

事業企画や経理、コンサルなど、特定領域に強みを持つ人はその専門性を活かしやすく、数字や戦略に関わってきた経験がある人は、経営企画の即戦力として評価される傾向があります。さらに、経営層との距離が近いからこそ、「経営に貢献している」という実感を得られるのも大きな魅力です。

未経験でも「なぜ経営企画に挑戦したいのか」「自分は何を活かせるのか」が明確であれば、十分に道は開けます。本記事で紹介した視点をもとに、自身の強みや志向を整理し、情報収集と戦略的な準備を重ねていけば、経営企画というキャリアに踏み出すチャンスはきっとつかめるはずです。