企業の中枢で経営層と連携し、戦略立案や事業推進を担う「経営企画」。華やかなイメージを持たれやすい一方で、実際にどんな人が向いているのか、逆にどんな人が苦戦しやすいのかはあまり知られていません。特に未経験からこの職種を目指す場合、自分に合っているかどうかを判断することは、転職やキャリア形成の大きな分かれ道になります。
本記事では、経営企画の基本的な役割や求められる視点を踏まえながら、向いている人・向いていない人の特徴を具体的に解説します。さらに、未経験からでも目指せるスキルや経験、キャリアステップ、採用で見られるポイントまで網羅的にご紹介。単なる適性診断ではなく、「どうすれば近づけるか」という実践的な視点も大切にしています。
「やりがいのある仕事に挑戦したい」「将来的に経営層に近いポジションを目指したい」と考えている方にとって、経営企画というキャリアは非常に魅力的です。まずは、自分の経験や志向と照らし合わせながら、可能性を広げる第一歩として本記事を活用してみてください。
経営企画の仕事とは?|役割と求められる視点を知る
- 経営陣の意思決定を支える「戦略の中枢」
- 事業全体を俯瞰し、定量・定性の分析を行う
- 抽象的な課題に対して、論理と仮説で方向性を導く
経営企画は、会社の経営方針や事業戦略を策定・推進する役割を担うポジションです。財務数値、事業データ、マーケット動向などをもとに、経営層の意思決定を支える戦略提案を行います。現場よりも「全社視点」で物事をとらえる立場であり、まさに企業の羅針盤のような存在です。
主な業務は、事業計画の立案、予算策定、KPI管理、経営資料の作成、競合分析、M&Aの検討など多岐にわたります。業務内容は企業によって異なりますが、いずれも「課題の抽出」と「意思決定の支援」が核になります。抽象的なテーマに対して、構造的に思考し、仮説を立てて分析する力が必要です。
また、経営企画は「社内のハブ」として、他部署との連携・調整も日常的に発生します。戦略を机上の空論に終わらせず、組織全体に浸透させて実行へと移すためには、論理だけでなく柔軟なコミュニケーション力も求められます。数字だけでなく、人や組織を動かす視点が必要なのが、経営企画という職種の奥深さです。
経営企画に向いている人の特徴
- 抽象的な課題を論理的に整理できる人
- 全体最適で物事を考えられる思考の持ち主
- 相手の立場を理解しながら調整・推進できる人
経営企画に向いている人の最大の特徴は、物事を構造的かつ論理的に整理する力です。曖昧な情報や抽象的な課題に対しても、筋道を立てて仮説を立て、課題の本質に迫る思考ができる人は、経営企画において大きな武器を持っていると言えるでしょう。
また、個別の施策ではなく「全体をどう最適化するか」という視点で考えられることも重要です。たとえば一つの部署の利益ではなく、全社的な成長やシナジーをどう実現するかに興味を持てる人は、経営企画に向いています。部分最適にこだわりすぎると、戦略レベルの意思決定を誤る可能性があるためです。
さらに、複数の関係者を巻き込みながらプロジェクトを進めるため、社内の調整力や信頼関係を築くコミュニケーション力も必要不可欠です。論理的に話す力と同時に、相手の立場を理解し、柔軟に対応できるバランス感覚を持つ人が、経営企画では長く活躍できます。冷静さと粘り強さを兼ね備えた人にとって、非常にやりがいのあるポジションです。
経営企画に向いていない人の傾向とは
- 不確実で抽象的な状況にストレスを感じやすい
- 目の前の業務に集中しがちで、全体視点を持てない
- 論理構成より感覚や思いつきで動いてしまう
経営企画は、明確な答えのないテーマや、将来を見越した仮説構築を日常的に求められる仕事です。そのため、正解がない状態に不安を感じやすい人や、判断に自信が持てず思考が止まってしまう人は、業務にストレスを抱えやすい傾向があります。
また、特定の業務や数字だけに強くこだわり、部門単位や短期的な視点で物事を捉えてしまう人も、経営企画では苦戦しやすいです。全社最適や中長期の成長に向けて動く必要があるため、自部署の利益や目先の効率だけを重視すると、判断を誤りやすくなります。
さらに、思いつきや感情に左右されて動くタイプの人も注意が必要です。経営企画では、論理性・再現性が求められるため、直感的なアイデアでもそれを裏付ける根拠を示せないと社内の説得が難しくなります。考えを筋道立てて説明する力や、データに基づいて意思決定できる姿勢が重要です。向き不向きを見極めることは、自分にとって納得のいくキャリア選択の第一歩になります。
向いているかどうかを見極める自己分析のポイント
- 過去の経験から「論理思考力」「全体視点」が発揮された場面を振り返る
- 問題発見・仮説構築・関係者調整の経験があるかを棚卸しする
- 経営企画的な思考に触れるために、模擬アウトプットを試してみるのも有効
経営企画に向いているかを判断するためには、「どれだけ経営企画的な思考を自然に使ってきたか」を自分の経験から振り返ることが大切です。たとえば、課題を見つけて解決策を提案した経験や、部署をまたいだ調整役を担ったことがあるなら、それは適性のヒントになるでしょう。
また、視点の高さや論理的な整理力も重要です。日々の仕事や学生時代の活動において、「自分の関わる範囲を超えて、全体にどう影響を与えるか」を考えて行動してきたかどうか、言語化してみると傾向が見えてきます。単なる作業者で終わらず、仕組みやプロセス改善を意識していた経験も向いている兆しです。
さらに、未経験者でも「経営企画的なアウトプット」を試してみるのも一つの手です。たとえば、興味のある企業の事業課題を自分なりに分析し、簡単な戦略資料を作ってみることで、思考の向き不向きが体感できます。実践的なアプローチと自己内省の両方を通じて、自分のキャリアの適性を立体的に理解していきましょう。
未経験でも目指せる?経営企画に活きるスキルと経験
- 分析力・論理思考・資料作成スキルは職種を問わず活かせる
- 営業企画・マーケ・経理・コンサル経験は特に親和性が高い
- 実務に近いアウトプット経験が転職活動でも評価されやすい
経営企画は未経験からでも十分に目指せる職種です。特に重視されるのは「考える力」と「伝える力」であり、これは職種を問わず磨ける汎用スキルです。データをもとに仮説を立て、筋道を立てて説明する力、そしてそれをパワーポイントなどで可視化するスキルは、企画職の基盤になります。
過去の職種でいうと、営業企画やマーケティング、経理・財務、コンサルティングといった経験があると、経営企画と親和性が高いとされています。たとえば、KPIの設計やレポート作成、収益構造の分析などに関わってきた人は、比較的スムーズに業務に入れる可能性があります。
とはいえ、経験の有無だけでなく「どれだけ経営企画的なアウトプットを出せるか」が重要です。実際の転職活動では、自主的に作成した業界分析や事業改善提案資料などが評価されることもあります。日頃から経営視点を意識して情報を整理したり、仮説をもとに企画立案を試みたりすることで、未経験者でも一歩リードできます。
実際に経営企画に多いタイプ|私が経営企画で働いてわかったこと
- 経営企画はコンサル出身者が多く、論理的思考と資料作成スキルが強みになる
- 高いコミュニケーション力・調整力が必須で、部門間の橋渡し役として動く場面が多い
- 資料作成能力は想像以上に重要で、経営層に納得されるアウトプットが求められる
- 役員の“便利屋”にならないよう、主体的に役割をコントロールできる人が活躍
- 部門間調整だけでなく、自ら課題を発見し提案・実行に移せる人が評価される
- 社内で“花形部署”として見られる一方、成果やアウトプットの質はシビアに評価される
経営企画というと、戦略立案や経営層との仕事、華やかな会議室のイメージが先行しがちです。しかし実際にこの部署で働いてみると、表からは見えない“リアル”がたくさんあります。
私自身、経営企画に転職する前と後でイメージが大きく変わりましたし、同僚や周囲の経営企画経験者にも共通点がありました。ここでは、経営企画に多いタイプと現場で気づいた実情を、実体験ベースでお話しします。
コンサル出身者が多いのは事実
まず感じたのは、経営企画には戦略コンサルや業務改善コンサル出身者が非常に多いということです。理由は明快で、経営課題を構造的に分解し、論理的に解決策を提示するスキルが、経営企画業務とほぼ直結しているからです。実際、私の周囲でもコンサル出身者は資料作成の精度やスピード、経営層への説明力が群を抜いていました。
ただし、必ずしもコンサル出身である必要はなく、事業会社の事業企画やFP&A、経理から転職して成功している人も多いです。共通しているのは、「数字をベースに考える力」と「経営層に必要な情報を整理して提示できる力」を持っていることでした。
求められるのはコミュニケーション力と調整力
経営企画は「戦略を考える」だけでなく、「関係者を巻き込んで実行する」ことが重要なミッションです。新規施策を進めるにも、予算やリソース配分を変えるにも、必ず他部署の協力が必要になります。
現場で求められるのは、経営層と現場の両方の言語を理解し、互いの立場や制約を踏まえて調整できる能力です。私も最初は「企画力さえあれば通用する」と思っていましたが、実際には会議の根回しや意見の交通整理といった“地味な段取り力”が成果を左右します。
さらに、経営企画では、経営会議や取締役会、株主向け説明など、あらゆる場面で資料が使われます。そのため、パワーポイントやエクセルでの資料作成スキルは想像以上に重要です。
特に、限られた時間で必要な情報をロジカルにまとめ、かつビジュアル的にもわかりやすい資料を作れる人は重宝されます。これは単なるデザイン力ではなく、「何を伝えたいのかを明確にし、不要な情報をそぎ落とす力」に近いものです。コンサル出身者が強いのも、この点のスキルが非常に高いからだと感じます。
役員のパシリになってしまう人は向いていない
これは少し現実的な話ですが、経営企画は役員や経営陣と距離が近いため、依頼や指示が頻繁に飛んできます。中には本来の戦略業務とは関係のない“雑務”も混ざります。
ここで受け身の姿勢で全てをこなしてしまうと、いつの間にか「役員の便利屋」になってしまい、戦略的な仕事から遠ざかります。実際、そうなってしまった同僚もいました。自分の役割を意識し、必要に応じて断ったり優先順位を交渉できる人でなければ、長期的には消耗してしまいます。
部門間の調整がメインになりがちだが、自分発信で動ける人が活躍
経営企画の大きな役割のひとつが、部門間の橋渡しです。予算編成や中期計画、全社プロジェクトの推進など、関係部署をまとめる業務は多く、これが実務時間の大半を占めるケースもあります。
ただ、単なる調整役で終わってしまうと評価は上がりません。活躍している人は、調整の中で課題を見つけ、自ら改善案を提示し、経営層や現場を動かしています。私もこの点に気づいてからは、単なる“情報の橋渡し”から“課題解決の提案者”にシフトし、仕事のやりがいや影響力が大きく変わりました。
やっぱりどこでも花形部署
経営企画は社内での存在感が大きく、どの会社でも“花形部署”と見られがちです。経営層と直接やり取りし、会社の方向性に関わる資料を作るため、他部署からの注目度も高いです。
一方で、その分だけ成果やアウトプットはシビアに評価されます。経営層の求める水準は高く、資料や提案の質が低ければすぐに信頼を失います。華やかに見えても、裏では膨大な準備と調整が必要な仕事です。
経営企画を目指す人におすすめのキャリアステップ
- まずは“分析・調整業務”に関わる職種からキャリアを積む
- 営業企画・経理・事業企画などは経営企画との接点が多い
- コンサル経験者からの転職も近年は非常に増加傾向
未経験から経営企画を目指す場合、いきなりその職種に就くのは難易度が高めです。まずは「経営企画と類似の視点やスキルが求められる職種」で経験を積むことが現実的なステップとなります。たとえば、営業企画・経理・事業企画・マーケティング分析といった職種は、数字を扱いながら部門横断的な業務を担う点で経営企画と通じる部分が多く、キャリアの橋渡しに適しています。
近年はコンサルティングファームで数年経験を積んだ人が、事業会社の経営企画に転職するケースも増えています。コンサルでは仮説思考・構造化・プレゼン能力などが徹底的に鍛えられるため、そのスキルが経営企画の実務に直結するのです。もし新卒や第二新卒であれば、将来的に経営企画を視野に入れて、まずコンサルに入るというキャリア設計も戦略的といえるでしょう。
また、社内異動という選択肢も見逃せません。現職で経営層と接点のある部署や、経営企画と関わるプロジェクトに手を挙げることで、段階的に信頼を築いて異動を目指すことも十分可能です。経営企画への道は一本ではなく、多様なキャリアの積み重ねが最短ルートになります。
面接で見られる“適性”とは?企業が重視するポイント
- 論理的思考力は企画提案や資料作成での土台となる
- 社内外との調整力=伝える力・傾聴力が求められる
- 全体を俯瞰する「視座の高さ」が志望動機や回答の深さに現れる
経営企画の採用では、「ロジカルシンキング」「コミュニケーション能力」「視座の高さ」の3つが面接官からよく見られるポイントです。まずロジカルシンキングについては、「なぜその課題に取り組んだのか」「どんな仮説で行動したのか」「どのような結果に結びついたのか」という構造的な説明ができるかどうかが評価されます。自己PRや実績紹介でも、論理的に整理されたエピソードが重要です。
次に、経営企画は多くの部署と連携しながら仕事を進めるため、単に話す力だけでなく“伝える力”や“傾聴力”といった実践的なコミュニケーション力が問われます。面接では、質問への受け答えの的確さや、対話のキャッチボールの丁寧さから、その素養が自然と見抜かれます。上から目線や独りよがりな態度はマイナス評価につながることもあります。
最後に、「視座の高さ」は志望動機や課題提案の深さとして表れます。単なる「やりたいこと」ではなく、「企業のどの課題に貢献できるのか」「中長期的にどう価値を出せるか」という観点を持っているかどうかが差になります。説得力ある仮説提案や業界分析などを事前に用意しておくことで、他候補者と一線を画すことができます。
向き不向きに左右されない!経営企画というキャリアの魅力
- 視座・スキル・人脈が総合的に磨かれる成長ポジション
- 事業の“中枢”に関われるやりがいと影響力がある
- 将来的にCxOや事業責任者を目指すキャリアにも直結
経営企画の最大の魅力は、日々の業務を通じて「経営視点」「課題解決力」「部門横断の調整力」といった汎用性の高いスキルが一気に鍛えられる点にあります。数字と戦略に向き合いながら、経営陣と同じ視座で議論する機会が多く、若手のうちからビジネスの中枢に関われることは他職種にはない貴重な経験です。
また、単なる事務的な分析や資料作成にとどまらず、経営判断に影響を与える意思決定の一端を担えるポジションであるため、「会社を動かす手応え」を実感しやすいのも魅力のひとつです。自分の提案や仮説が実際の施策に反映されたり、事業成長に貢献できたりする喜びは、非常に大きなモチベーションになります。
さらに、経営企画で培ったスキルや視座は、将来的に事業責任者や経営幹部を目指すうえで大きな資産になります。たとえ最初は不向きと感じたとしても、経験を積むことで視野が広がり、実力がついてくる職種です。だからこそ、「向いているかどうか」だけで判断せず、成長意欲がある人こそ挑戦する価値があるキャリアだといえるでしょう。
まとめ
経営企画は、企業の方向性を左右する戦略立案に関わる重要なポジションです。論理的思考力や全体を見渡す視座、関係者と調整できるコミュニケーション力などが求められ、「考える力」と「伝える力」が両立している人が特に向いています。一方で、正解のない状況や抽象的な課題にストレスを感じやすい人や、目の前の業務に集中しがちな人は苦戦しやすい傾向もあります。
しかし、向き不向きだけでキャリアを判断する必要はありません。未経験であっても、営業企画・経理・マーケティング・コンサルなど、経営企画に近いスキルを持つ職種からのステップアップは十分可能です。大切なのは、自分の経験を客観的に棚卸しし、経営企画的な思考やアウトプットを日常の中で意識していくことです。
経営企画は、職種としての専門性だけでなく、将来的に事業責任者や経営幹部を目指すための土台にもなります。「向いていそうかどうか」だけではなく、「挑戦することで自分をどう高められるか」という視点で、自分自身のキャリアを考えてみましょう。経営企画は、成長意欲のある人にこそふさわしい挑戦的なフィールドです。
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